「おっと。紫苑。」 「ネズミ、はい。」 「ああ、どうも。」 椀にスープを注ぐとき、水滴が弾けて多めに机にこぼれ、手元も狂う。スープが全部こぼれそう、だと思ったおれの手を支え、雑巾で台を拭く。 この的確な気遣い。気づき。 紫苑が話そうとしても、ネズミが許さないでしょうね。 2．ネズミの名付け親は、「老」です。 力河と初めて会ったときに、「火藍と友人たちを写した」と力河が言っています。 その写真をネズミが拝借して老に見せたんです。 老と初めて出会った時の事は、まだ明らかになっていません。 ネズミが幼い頃に助けてくれた老婆は、ネズミの本当の祖母かどうかも分からないという、結 ネズミと紫苑は元々火藍と紫苑が住んでいたロストタウンの家に帰り、休む。 それはいい。 二人で眠り、食べ、飢えも苦しみもない生活をした。 それもいい。 僕の中でまず悲しかったのは次だ。 ネズミは紫苑の元からいなくなる。 勿論、昔の様に黙って出て行った訳ではない。 ちゃんと紫苑に別れを告げて行った。 僕の中でそれは半分予想していた出来事だったから悲しくはあったけ
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